振動吸収ボードの効果
1.5に続き、更に振動の行方を見てみましょう。インシュレータを通して受け皿に伝えられた振動は受け皿を通してその下、床に伝えられます。この床でも反射が起こります。そこで、オーディオボードとか呼ばれる板・振動吸収ボードを床と受け皿の間に挟むわけです。よく、オーディオボードの役割は床から機器に伝わる振動を抑制することにあると思われていますが、機器に生じた振動を吸収する役目の方が大きいと思います。
例えば、日本の家屋には畳が多く使われますが、畳は板の床やタイル・石・コンクリートなどの床と比べると柔らかい材料で、バネでいうと柔らかいバネであり、図1に示すように共振周波数は低くなります。振動の理論では、共振周波数より高い周波数の振動は伝わりにくくなり、振動絶縁となります。つまり、畳により機器と床の間で振動が絶縁され、振動を逃がすことができないことになります。

その逆に、畳からも振動がオーディオ機器に伝わってこないことになります。そこで、畳が振動を伝えない特徴を生かしながら、図2に示すように床からの振動はオーディオ機器に伝えず、オーディオ機器の振動を吸収して処理するのにオーディオボードが一役買うわけです。

少し話を変えてみましょう。人間の聴覚は、4000Hzあたりが最も感度が高くなっています。
子供の泣き声や女性の悲鳴のピークも4000Hzあたりと言われています。これは、自然の中で生き延びていくために備えられた機能なのでしょう。さて、オーディオ再生音でも同じですね。4000Hzあたりの音を聞き分ける能力が高いということです。一方床など大きな構造物の基本振動数は非常に低く、高い周波数成分は小さくなっています。人間の体の振動に対する感覚も、80Hzせいぜい100Hz程度の振動までしか感じない(これ以上の振動数は公害振動の評価対象になっていない)と言われます。「1.3 振動から生じる雑音(アンプ)」でお話ししたときに示したアンプ上の振動測定結果では、音を再生していないときにはアンプに振動はほとんど発生せず、再生音によって振動が生じています(電源トランスに起因した振動は生じていますが、聴覚の特性から見ると非常に小さな振動です)。つまり、床からの振動(個体伝播)の影響は少なく、音による加振(空気伝播)が大きく影響することになります。その振動を処理するのがオーディオボードの役目であると考えられます。
では、オーディオボードに要求される特性とはどんなものでしょうか?LPプレーヤの下で用いるインシュレータの場合、針飛びの原因になる衝撃を絶縁する目的で軟らかいばね特性が要求されていました。構造的には回転駆動力部(モータ)および筐体や床とターンテーブル・ピックアップ部間との振動絶縁により、動力部や筐体・床の振動がピックアップによって拾われないようにします。

振動絶縁には通常弾性支持が用いられ、ターンテーブルやアームを柔らかいばねを使って支持することで共振周波数を数Hz以下に抑え、駆動部や筐体からの高い周波数の振動(衝撃成分)を絶縁する効果を持たせています。しかし、アンプやスピーカなどではその必要はありません。例えば、アンプ自体に生じる振動のピークは低い周波数で、せいぜい数百Hz止まりで、人間の聴覚では感度が低い領域です。このことは、電源に由来するハム音でも同様なことが言えます。再生していないときには「ブンブン」言って気になりますが、音楽を再生し始めるときにならなくなります。一方で、「サー」といったヒスノイズ(高周波数での白色ノイズ)が俄然目立ってきます。これによって、音楽がベールに包まれた感じになります。こんな状況で、アンプをオーディオボードに載せると、かかっていたベールが剝がされるように、ノイズ感が低減します。つまり、「アンプに生じていた振動が低減されて、雑音が減った。」といった感じになるわけです。ということは、オーディオボードには人間の聴覚の感度が高い周波数領域で振動吸収性能を持たせれば、再生音に畳重する高周波域の雑音を低減できる、一層クリアーで雑音感の少ない再生音を作り出せるわけです。
KRYNAでは、高周波領域での雑音低減を念頭に、オーディオボード「パレット」を提供しています。また、オーディオ機器からオーディオボードへ効率よく振動を伝搬して除去するためのコラボ製品としてD-Propの併用をお勧めしています。オーディオ機器だけでは対策しきれない雑音・音像定位の不明確さを、オーディオボードとインシュレータの併用で解消して見られては如何でしょうか?