HGSに効果的な雑音対策とは?
オーディオ機器には雑音はつきものですね。では雑音発生の原因はどこにあるのでしょうか?
アンプの場合、抵抗や増幅素子などの熱雑音、トランスなどの歪電圧(ハム音)が主に考えられますが、こうした雑音よりはるかに小さい雑音、通常無視される雑音に、振動に起因した雑音があります。また、アンプの歪特性や、アース電位の微細な変動など、通常無視してもかまわないとされる雑音が発生します。熱雑音やハムなどは、素子の選定や回路構成などである程度対策できますし、電源の分離などの対策も考えられます。しかし、こうした対策は非常に高価になりますが、こうした対策を行っても、根本的に、振動の影響、歪特性、非定常性などの影響は免れません。
HGSを気にしなければ、もう十分と言えるでしょうが…。
一般に、こうした電気的要因以外の要因による雑音は、熱雑音やハムなどの雑音に比べ非常に小さいので、再生音の音色に影響するほどではありません。ただ、うっすらとベールをかぶったような、薄い霧の中にいるような、少しばかり釈然としない音にはなるでしょうが、こんなものだと思えば気にならないレベルと言えます。特に、演奏家の方々は、楽器の演奏法や表現法など録音した音を聞く目的が異なっていますので、楽器そのものの音とは違うことを認識しながらも、気にはならないでしょう。また、生の楽器音など聞きなれている方は、録音と生の音の違いは仕方がないと思っておられると思います。しかし、もし、オーディオシステムにHGSを望むなら無視できるものではなくなります。つまり、ステレオによるオーディオ再生に、リアリティ、会場そのものを再現する3次元音響空間再生(HGS)を望むなら放置できるものではありません。
では、ざっくりと雑音の原因とその対策方法について見ていきましょう。第1に、振動による影響について考えましょう。本編第1章で詳しく説明しますが、オーディオ機器が扱う信号は、アンプなどに関係する電気信号とスピーカによる機械-音響変換での機械的振動信号に分けられます。アンプなどからスピーカユニットの入り口までは電気信号です。一方、スピーカユニットから先は、マグネットを基準とした、機械的振動になります。その後音波として放射されます。しかし、アンプなどの電子機器が振動すると、機器内の導線や基板(導体)が振動し、地磁気との相互作用によるフレミングの右手の法則(vBl則)に従って導体に電圧が生じます。この電圧は、本論の 1.3 で述べますが、アンプではスピーカ出力端子などに出現します。スピーカでは、電気信号を音波に変換するところで影響します。電気信号を機械的振動に変換し、この振動により音波を生成しますが、音に変換する場合、振動の基準点がスピーカユニットのマグネットとなります。マグネットを基準として、コイルに流れる電気信号により、フレミングの左手の法則で機械振動に変換して音波を作ります。この時、外部振動によりマグネットが振動してしまうと、電気信号から正確な音波に変換できません。つまり、マグネットの振動が雑音として放射音に載ってくるわけです。
オーディオ機器に影響する振動の原因には、設置している床の振動や空気伝播による振動(この中にはオーディオ再生による再生音に起因した振動も含まれます)のような外来振動と、機器に内蔵されるトランスやドライバーなどの振動源による内部振動に大きく分類されます。通常、床の振動など外来振動に対しては弾性支持などの振動絶縁が効果的と言えます。共振周波数を低く設定した支持部の上に載せる手法です。フローティング技術も同じです。この場合、共振周波数の1.414 倍以上の周波数に対して振動絶縁効果が生じます。つまり、床の振動は機器に伝わりませんが、機器の振動も床へ伝達して外部に逃がすことはできません。一方、音楽再生時には空気伝播によりアンプなども加振されますが、この振動は防ぐことはできません。あくまで個体伝播経路を遮断するだけです。また、床など大きな構造物は、振動の周波数成分が低い方に限られます。周波数が低いと、vBl則による発生電圧は低くなりますし、人間の聴覚の感度も低い領域です。一方、空気伝播や内部発生の振動はどうなるかというと、絶縁されているため、機器内に充満します。逃げ場のない振動エネルギーは機器を振動させ、電気的な雑音を生じさせます。と言っても、それだけ聞いて分かるほどではありませんので、気にならないかもしれません。しかし、こうした雑音は、知らない間に再生音を薄いベールに包んでしまい、霧がかかったような音になってしまいます。結果として、HGS(3次元空間再生)ができなくなります。HGSを求めるなら、振動は積極的に逃がすことが必須となります。このためには、インシュレータなどで、オーディオ機器に発生した不要振動を積極的に床に逃がすことが効果的となるわけです。
KRYNAでは、特許技術に基づくインシュレータ(D-Prop)を提供しています。詳しくは後の方で説明しますが、D-Propにより細かな雑音を取り去り、透明感が上がると同時に、HGSが出現してくる音楽再生を楽しむことが出来ます。